浮世風呂
Bath House of the Floating World 1981 冷蔵庫 木 カードボード 89 X 89 X 117 cm
ニューヨークの次郎長
第14回 黒髪の踊り娘 ロフトは大騒ぎだ。皆な、ぐっすり寝静まっていると思いきや、帰って来た二人の眼前に、即席のテーブルの上で、裸で、踊り狂う女、その周囲を、手拍子で、子分共が、ぐるぐる踊り廻っているではないか。寝巻きや、ステテコ姿のまま、嬌声をあげ、始めて裸を拝ましてもらってますと云わんばかりの、デレ助になり切っている。大政が、やっと親分に気付き、飛んで来た、説明によれば。 バーの後、トップレス見物に向ったが、そこは正に場末の小屋で、安っぽい舞台の上に、スタイル満点の女が三人、いっペんに出演、全ストでぶらぶらしているだけ。ガタガタの散らばった鉄の椅子を引寄せ、勝手に場所をきめ、眺める。舞台の向う側奥は、大股開きが見られるがチップ次第で熱の入れ方も変る。大政、鮫助、豚熊の三人は、無論、奥に陣取り、一本二ドル(五百円)のビールを手に眺めていた。 「うっひっひっひっひ」 鮫助は、よだれを流し、ど近眼の限鏡が、上気して曇ると、何度もはずし、ワイシャツのそでで拭う、その間だけ、あたりを、きょろきょろ、何も見えないくせ、一応見廻す。舞台のそでまで、にじり寄ってしまった鮫は、大政たちを呼び、一ドル札をねだり取ると振り廻した。近づいた、均整のとれた、すばらしい体の黒人女が、玄関の靴拭きに使う、小さな敷き物に、どっかと腰を下すと、 「さあ、何がしたいんだい」 と聞いた。 「オープン」鮫の語学力ではこれがせいいっぱい。女はあそこを鮫の鼻面すれすれまで近づけ、弓なりに反り返り、両手を後ろについて、こっちを見た。 「これでいいんだろう」 と聞き返し、チョコレート色の暗がりに見え隠れする、生うに色の観音様を、もりもり動かして見せたからたまらない。 「ひ−」 とばかり、鮫は顔を埋めてしまった。女は筋肉のよくしまった太股で、しっかり、それを挟み込むと、左右に振り廻すので、鮫の体は、頭を突込んだまま、がたがた、合せて動かなくてはならない。 チンピラギャングそのままの格好の、踊り娘のボーイフレンド兼、用心棒たちは、こんな光景には慣れっこで、表情一つ動かさず、カウンターにもたれている。 たまりかねた、大政と豚熊も、こんな極楽浄土に仲間入りさせろとばかり、鮫の背中にしがみつき、顔をねじ込ませようと、あせっていたが、そこまでは、二、三ドルの、しけたチップでは無理、時間切れ、と彼女は、マットを片手に立ち上り、さっさと、向う側の客の方に、踊りに行ってしまった。 「ここは特別席です、もう一本ずつ飲んでください」 と、追加ビールを、ウエイトレスが、強引に渡して行った。 「ふう−、どうする、鮫助」 「もう少しねばろうぜ、ビール残すやつがあるか、もったいねえ」
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