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パーティー

Party
1985
72 X 120 cm
ニューヨークの次郎長
第22回 次郎長一家売出す
カニをぱくついているやつも、そのまま横っとびに逃げ、二、三本、酒びんが倒れ、黒山の食堂コーナーも、職人だけ残し、誰も居なくなってしまった。
アメリカのパーティーでは、ちょっとした口論でも禁物、それが長引けば、皆なの注目を浴び、気分を壊した者は、そっと、主催者の気付かぬよう、次次と帰ってしまう。 ましてタキシード同士の派手な殴り合いなんていうのは、テレビ映画だけのシーンで、とばっちりを受け、ダイヤモンドのネックレスや指環でも失しようものなら、主催者は訴えられるのが必定。 だから、うるさいオープニングパーティーには、協会派遣の、上等な方ガードマンが何人も、要所要所に、びしっとユニホームを着、腕を後手に組んで、にらみを利かせているから、絶対トラブルは起きない。 実際、アメリカで、取っ組み合いのけんかになれば、どっちか必ず、ナイフを出す。 スパニッシュハーレムのバーでいざこざの末、刺されたり、撃たれるやつが非常に多いのも、マナーをわきまえない馬鹿どもが、よりによって、強いラム酒のがぶ飲みのせい。 画廊オープニングパーティーで、酔った先輩が、テーブルを引っ繰り返すのを、どうしてよいかわからず、ただにやにやして見ているだけ、なんて光景は、よっぱらい天国の国だけの出来事です。 ここでは、翌日、さっそく莫大な金額のつけが来るからご心配なく。
なだめすかして、やっと飛び入りハプニング先生には、無事お引取り願えました。
「あいつ、招待券、ちゃんと見せたから入れたんですよ」
今度は大政が、
「こっちにも、変なのが、たくさん舞い込んでいますぜ」
「何だって」
蚕棚ベッドの二段目に、間抜けた顔の鬼吉が腰掛けている隣りに、安物の背広を着た、今度は赤髪の白人が、一生懸命、鬼吉の顔をなでたり、何かささやき、キスしたり、とうとう鬼吉のしまの甚平の胸元に手を突込んでしまった。
「一体どうなってんだ」
「さっきまで、鬼吉のやつ、威勢よく、はまぐりをむいていたはずだぜ。」
「やつの目を見ろ、瞳孔が開いちまっているじゃあねえか」
「親分」
小声で鶴吉がささやいた。
「全員、一服盛られたらしいですねえ、こりゃあ、あの金粉入りの酒ですよ、Lか何か、混ぜてあったんです」
「Lって何だ」
「覚醒剤、LSDのことです、ほんの少量で、十二時間は、ばっちり効いちゃうんです」
「もう酒瓶はほとんど空だぜ、子分共が全部飲んじまったよ」
「高下駄の久七の差金に違いねえ、変態や、汚ねえバムに、ただで酒が飲めるパーティーだと、偽の招待券を作って渡したに決ってまさ、金粉酒だって、ありやあ安物のアルミ箔を千切ってぶち込んだに決ってます、今頃は、連中、胃の中が、ぴかぴか光り輝いてますぜ」
「ちきしょう、ひでえ野郎だ」
「親分、あっしも、同じものを、今日、少し持ってますから、すしに混ぜて、猿に喰わしちまいましょう」
鶴書の持っていた、LSDは小さな紙にスポイトで、点々と薬が染み込ませてあり、3cmぐらいを千切って、さしみとしゃりの間に挟み、例の椿の花をそえ、体裁よく飾って、猿のところに運ばせた。 鬼吉に躍起になって、抱き付き追っている赤髪のポケットから、酒びんが、顔をのぞかせているのを、大政が見付け、
「あいつ、バムだ」
バムとは、ストリートにしゃがみこみ、朝っぱらから飲んでいる、ニューヨーク特有のアル中患者で、ひどいのになると、小便は垂れ流し、糞まで、ごみ缶の横にしたり、ねぐらも、大通りの片隅、落ちている段ボールにくるまって夜を過す不潔極まりない厄介者。 だが不思議と金に困っていない風、それもそのはず、退役軍人だったり、中には無論、将校クラスもいるだろう。 彼等が、七月四日の独立記念日になると、ぼろを脱ぎ捨て、正装して、朝から冷やっこいビールで乾杯してやがる。 ミリオネヤーのなれの果てや、重役の椅子けり、美人の妻、可愛い子供を見捨ててまでも、自由を勝ち取ったまではよいが、行きつく先がアル中街道バム通りの突き当りだったりで、野垂れ死んだ時、腹巻の中に、現金数十万ドルが見つかったり。 お恵みをと、ねだられ、顔を見たら、少年時代にあこがれた、ハリウッド映画、ターザンの、なれの果ての姿だったり。 やはり酒歴の長いニューヨーク、この世界ものぞくとさぞかし底が深いんだろう。
会場を見渡すと、それも一人や二人ではなかった、残っている白人は、ほとんどバムたちではないか。
「誰だ、やつらを連れ込んだのは」 .
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