竜安寺

Ryouanji
1984
226 x 366 cm
アクリル・キャンバス
ニューヨークの次郎長
第31回 コニーアイランド作戦
「止しな、後の祭りってえことよ、反省会したって始まらねえ、とにかく、ここまで来ちまったんだ、前に進むしかねえよ、なあ皆な、そうだろう」
どこから引っ張り出したのか、黒地に紅梅を染め抜いた羽織を引っかけた大政は、なかなかの男前で、たこ目と、お話の真最中。
「あれ、いつからあの二人、出来ちまったんだい」
「たこは純情だからなあ」
「純情な女なんて、この世に居たら、お目に掛かりたいね、ヒートしてやがるんだろ」
「私なんか、ヒートのしっぱなしだよ、苺ちゃん、ああ、力強くて、やさしくて、ロバート・レッドフォードか、ピーター・オトゥールみたいなのと恋愛したいわ、らくだに乗って砂漠をさまよったり、盗城に襲われ、流れ矢にあたって、彼氏の胸に抱かれ、息を引き取るなんて、すてきだと思わない、鮫ちゃん」
「月の砂漠か、その面で」
「ああら、私、まだ化粧、落してなかった」
「そのままの方がお似合だよ、牡丹灯籠には」
「あああ、満腹になりゃあ、次は色気か、薄汚ない動物共だねえ」
「うっふっふ、苺ちゃん処女なんだな、覚えたら大変だよ、良くって良くって、こっちにいらっしゃい、可愛がってあげるから、鮫おじさんは、やさしいんだよ」
「助平な糞鮫、海に帰って、魚でも取って来い、あかんベーだ」
「鮫助、こっちにおいで、今夜、この牡丹灯籠が、よーく可愛がってあげるからね、もう飢えちゃってどうだろう、眼鏡はずり落ちてるわ、しまらないねえ、砂漠のローレンスと大分違うけど、こいつとは、キャナル通りのストリップ小屋からの仲だからねえ、今夜、私のあそこを、よーく拝ましてあげるからね」
「それじゃあ不公平だ、鮫だけいい事しやがって、皆な仲よくここで暮らすんだ、先生、ひいきはよくないですよ、わっしらにもおすそ分けを」
「冗談じゃあないよ、私は慰安婦しに来たんじゃないわよ」
「蚕棚で、毎晩、ごろごろにゃんにゃんされたんじゃあ、まわりの子分共もたまらねえ、ここは姉さん、一肌脱いでやっちゃあくれめえか」
「そう親分に云われちゃあ私だって、そうねえ、四、五人ぐらいまでなら、何とか」
「よーし決った、そうだいいことがある、梅次、お前テント持ってたろう、あいつ貸せ、ついでに寝袋もだ、こいつ持ってって、屋上の隅におっ立てろ」
こうなると男は、行動が素早い。
「早くしろ」
「天幕の組立て方知らねえのか」
「ええい、めんど臭え、俺は寝袋だけでいいよ」
「雨が降ったらどうするんだ、それに周囲のピルから望遠鏡でのぞくやつがいるかもよ」
「うふふふふ、うれしい親分だねえ」
「ああ、夢みてえだ」
「金、取られたりして」
「それやったら、お手手が、後に廻るぜ、犯罪になっちまうんだ」
「どんな」
「売春だよ、あほう、何も知らねえな。」
「あああ、全く見てられないねえ、これじゃあ全く、アニマルハウスもいいとこね、さあ、私は絵を描かしてもらいますよっと、誰も邪魔しないでよ、こんな連中と付き合ってたら、いつまでたっても、うだつがあがりゃあしない、私はどんどん先に行かしてもらいますよ、ねえ鶴吉さん、紙とペンか何か持ってない、私、何も無いのよ、後で描いた絵売って来て返すから」
「金づちや釘ならあるけど、白い紙か、蚕棚のやつに借りとけよ」
「不潔だからね、あいつら、付き合いたくないんだけど、まあいいや、鬼吉さん、あんたのスケッチブック、貸してよ」
「ああいいとも、全部、苺ちゃんにやるよ、ほら、水彩絵具だけど、それにコンテ、ペン、筆、皆なやるよ」
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