ドリンクモア2
Drink More 2 1993 36 × 25 × 8 cm プラスティック板・カラークレー・FRP
ニューヨークの次郎長
第56回 大前田の栄五郎親分
栄五郎は、ブルックリンにある、アート・アカデミーに入学、そこで日本女性と結婚、卒業と同時に、誰でもが味あわされる、画家の修業時代の苦労が始まるのだが、今のように、ソーホーだ、ビレッジだと、国際色豊かに、世界各国から、自国の文化の代表みたいな顔をしたやつらが、のさばり歩くのと訳が違う。
ぼろビルばかり目立つ、一握りの倉庫街でしかなく、そこには、地元労働者相手のランチの店、それも、カウンターで喰うか、テイクアウトして、日当りのいい石段に座り込んで食うしかない。 しかし、この十年間に、あっと云う間に、ウエストブロードウェイを、目抜きの銀座通りとすれば、次郎長一家のグリーンストリート近辺から、南方面、キャナル通りまでのエリアが、ギンギラ、すずらん通り、並木通りと云ったとこ、どうして、と聞かれても、説明に困るのだが。
画家は極端に貧乏のはずだが、絶対に働こうとしない。 勝手な理屈をつけては、他人様から金品を頂こうとする。 そこは国際地区ソーホーだ。 世界中に、超大金持なら、ごまんと居る、その息子、同族、親戚の一人であれば、絵描きになるぐらいへでもない、強盗や、薬切れ患者、政治犯でふん捕まるよりましとばかり、金ぐらいですむならと、云いなり放題出資する。
こんな、ミリオネヤーの息子、娘が、何千人も集まってるんだから、金の無いやつの方が珍しがられる始末の昨今。 当然連中のおめかしは高級ブティックから、それもアップタウンの有名デパートやブランドでは駄目、金に糸目はつけぬ代り、超オリジナルの一点ものを着たがる駄駄っ子持やばかりと来れば、レストランも一本百ドル以上のシャンパンを、大量に用意しとかなければ、嫌われるとあって、フレンチ料理に、デビッド・ボウイ並の金髪、赤ネクタイのやさ男を、わんさとウェイターに使っての大サービスだから、まあ、ちょっと懐の暖かいおのぼりさんでも、レストランなら昼飯止りにしといた方が無難、深夜のこの辺りは、リムジンで一杯、今やソーホーとは、こんな所である。 大前田栄五郎が、苦労話が好きなのは、自分が成功したからである。 切掛けは、ホワイトハウスの在る、ワシソトンDCで、毎年開かれる、リンカーン巨像の前、ポトマック河畔の周辺を、数千本の桜が咲き揃う、四月の桜祭りに、有名な、スミソニアン大美術館主催の油絵コンクールで、金賞を射止めてしまってからである。
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