ピストル・エアメールオートバイ 2
Pistol Airmail Motorcycle 2 1993 31 × 27 × 12 cm プラスティック板・カラークレー・FRP
ニューヨークの次郎長
第59回 大前田の栄五郎親分
「何を!」
久七は立ち上がろうとしたものの、見廻すと、悪酔し始めた子分は、なめくじの八五郎だけではなかった。 仙太も白駒も、尻安も、女の都子まで、真赤な顔になり、目を細めて久七を睨(にら)み付け、皆、目が据って来ているではないか。 ちぇ、こりゃあまずい。 飲ませ過ぎちまったかな。
猿が口を挟んだ。
「まあまあ、皆様、かっかしないでおくれよ、グリーンカードが大変なこと、よく知ってるでしょう、本当にもう少しの辛抱、パスポートは全部、弁護士に預けてあるし、今日も電話で大丈夫だと云って来ているんだよ、飲むばかりじゃあなく、お食べよ」
「すだれの、その手は喰わねえよ、パスポート取り返すまでは、俺たち働かねえよ、もっと良い弁護士探して、申請し直すんでさ、よう皆な、外で飲み直そうぜ」
「くそう、恩知らずめ」
「明朝になれば、目が覚めて、ひら謝りだとも、逆に、お恐れながら、と移民局保安官に訴え出てやると脅かすのさ」
「しかし、法律が変わって、不正ビザの人間を扱(こき)使った方も、五千ドルの罰金くらうの知らねえのか」
「何とかなるよお前さん、高下駄の久七は大物だろう、それより親分、清水一家を懲らしめる、よい方法があるんだってば」
すだれの猿は大年増、さすがに悪知恵にたけている。 厚化粧の下で、目を細め、うれしそうに、彼女の計略を久七に話した。 どうやら狙いは、次郎長一家のマスコット、苺ちゃんらしい。
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