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ヨルキ・シウコネン”道具を運ぶ男” Jyrki Siukonen "A Man Who Carries Implements" 11/14ー12/21,2002 M.Y. Art Prospects 135 West 29th Street 尚、M.Y. Art Prospectsがこのロケーションで展示を行うのはこの展覧会がさいご。 今後の詳しい情報は、www.myartprospects.com参承のこと。
シウコネンは、フィンランド在住の現代彫刻家(1959〜)。今回の展覧会がニューヨークデビューとなったが、フィンランドではかなり名の知られたアーティスト。展覧会タイトル、”道具を運ぶ男”は、風刺小説、”ガリバーの冒険”で知られる18世紀の作家、ジョナサン・シフトの考えに基づいている。シフトによれば、道具とは、”言葉に勝るコミュニケーションの手段”であり、何気なく携帯する日常的な道具は、国や文化を超えて理解されうる”携帯言語”という。今回展示された作品は、テーマそのままに、全てシウコネン自身がスーツケースでフィンランドから運んだ物だ。
Jyrki
Siukonen, Life-line. 1994-2002, Cutting-boad,
spoon, rope 29x8 1/2 in. Courtesy M.Y. Art Prospects, New York
作品は皆小振り。木や布、紙など、身近な素材で作られており、手作りの温もりを感じさせる。例えば”Life-line"。一見アンティークのような趣があるのは、素材がファウンド・オブジェクト(found-object)であり、実際に長く使われた道具であるからだ。(ここでは、まな板にスプーン、ロープ。)古ぼけたロープは、シウコネンの祖母が使っていた洗濯紐だという。彼の家族の歴史を伝えるその紐は、まさに生活のライン(Life-line)でもある。制作年代が1994-2002となっているのは、それら様々な道具達が最終的に一つに組合わされる時間の経過を示す。
Jyrki Siukonen, Old Ties. 1993-2002 Pine, birch bark 23 1/2 x 11 1/2 in. Courtesy M.Y. Art Prospects, New York
小さなはしごが現れる作品、"Bugging Wittgenstein"。哲学者ヴィトゲンシュタインの一説からの着想というが、はしご型には人生のプロセスという意味も込められている。作品に至る時間を考えたとき、物と人はあるプロセスを共有する。1992年、ニューヨークを訪れたシウコネンは、あるスタジオで樺の木の樹皮を見つけるが、それは先の住人であったアーティストがそこに残したものだった。シウコネンは、それをフィンランドに持ち帰り、今回の展覧会に際し,その樹皮で”Old
Ties"を制作、そしてその作品と共に再びニューヨークにやって来た。(樹皮にとっては、里帰りといったところか。)コミュニケーションとしての物、そしてその物とのコミュニケーション、それは、特定の時間と場所を定めず、そしてまた変わり行く可能性も含む。
ギャラリー風景 Courtesy M.Y. Art Prospects, New York Jyrki Siukonen, Bugging Wittgenstein(2002)は、左より2番目
ギャラリー風景 Courtesy M.Y. Art Prospects, New York
シウコネンにとっての物達とは、ミニマリスト的な物そのものの存在理由を強調するものではない。曖昧な物の存在理由を、あえて追求する必要性があるだろうかと語るシウコネンには、未だその意味を限定できずにいる物たちをそのまま受容するおおらかさがある。インタビューの中、シウコネンは、次の様な話を紹介してくれた。イギリス人の友人とともにフィンランドの森を訪れた折の事、行けども行けども淡々と続く周囲の風景にその友人は”景色はどこにあるのか”と尋ねたという。すでに景色に囲まれていながら、友人が求めていたのは”絶景”だった。瞬時の解読性を求めがちな現代社会にあり、記憶、忘却、熟孝、回想といった、延々と続く自然体の時間を呼び起こしてくれる様な話だ。
Jyrki Siukonen, Halo of Odd Numbers 2002 Wood, copper 6 1/4 diameter Courtesy M.Y. Art Prospects, New York
しかし、それは受身的な姿勢を表すものではない。ヘルシンキの美術雑誌Taideのチーフエディターをこなした経験もある、シウコネン、多角的な活動を展開する。2001年、ヘルシンキ・アカデミーオブファインアートで博士号も取得しており、その折、”アーティストと飛翔への夢についての研究”という論文を執筆した。(この論文、"Uplifted
Spirits, Earthbound Machines. Studies on Artists and the Dream of Flight,
1900-1935"と題し、Finnish Literature Societyより出版されている。)飛翔への夢はシウコネン自身の夢とも重なり、気球の様な巨大なインスタレーションも制作している。シウコネンは、論文リサーチのためにコンコルドにまで”試乗”して99年にも渡米しており、スケールの大きなプランの持ち主でもある。その試乗、幸運にも、アカデミーオブフィンランドとアーツカウンシルからの奨学金を受けたおかげというが,まずは夢への実現ヘの熱意、それが幸運を運び、また彼の活動の火付け役にもなっているようだ。今回の小さな作品達,ニューヨークでは、ほんのイントロダクション。次章はどんな展開になるのか楽しみだ。 (Yoko Yamazaki)
ヨルキ・シウコネン 作品が納まるスーツケースをもって、との要望に気軽に撮影に応じてくれた Photo©Y. Yamazaki
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