KPOキリンプラザ大阪では、2006年9月9日から10月29日の期間中、1960年代から前衛美術家として活躍している篠原有司男の関西初の大規模な個展となる展覧会「イキスギタリヤ74〜早く、美しく、リズミカルであれ〜」を開催します。
本展は、74歳の前衛美術家“ギューチャン”こと篠原有司男の展覧会です。1960年“反芸術”を実践したグループ「ネオ・ダダイズム・オルガナイザーズ」での活動や、“ギューチャン”の代名詞にもなっている身体を使ったパフォーマンス「ボクシング・ペインティング」、独特な色彩とユニークなモチーフを使った立体「オートバイ作品」などで知られる篠原が、在住中のニューヨークから待望の大型新作を携えてやってきます。今回は、篠原の躍動感のあるペインティング作品を中心にエキサイティングな空間を創りあげます。
4階を最大限に使って展示するのは、大型の新作「洛中洛外 京都・パリ・ニューヨーク」です。桃山時代の「かぶきもの」やフランスのジャンヌダルク、アメリカの自由の女神など、たくさんの人形型の立体を京都五条大橋を舞台として配置し、時代や国を飛び越えた“ギューチャンカオス”が出現します。5階では、スピード感のあるタッチと大胆な色彩のドローイングも多数展示します。
また、6階では全フロアを使い、2005年に神奈川県立近代美術館鎌倉で行われた篠原有司男展「ボクシングペインティングとオートバイ彫刻」で15mのウィンドウに展示された「セザンヌについて語る二匹の蛙」も展示します。
破天荒な直観力をもって産みだされるペインティングと立体のパワーは、観る者を圧倒します。
[開催概要]
■名 称: 篠原有司男展『イキスギタリヤ 74〜早く、美しく、リズミカルであれ〜』
■日時: 2006年9月9日(土)〜10月29日(日)
11:00〜21:00(会期中無休)
■会場: KPOキリンプラザ大阪 4〜6階
大阪市中央区宗右衛門町7−2 TEL 06−6212−6578
■プロデューサー: 後藤繁雄(編集者・クリエイティブディレクター)
■入場料: 一般500円/学生300円(中学生以下無料)
■主催: KPOキリンプラザ大阪
■協力: ギャラリー山口 コンテンポラリー・アート・ジャパン・共栄繊維株式会社
[期間中のイベント情報]
―KPOスペシャルトークvol.50 「篠原有司男×椹木野衣×後藤繁雄」
■日時: 2006年9月9日(土)16:00〜(開場15:30)
■出演: 篠原有司男、椹木野衣、後藤繁雄
■会場: KPOキリンプラザ大阪
■入場料: 無料
■定員: 50名
※ 当日13:00より1階ショップにて整理券を配布します。
整理券の配布は、お一人様につき一枚とさせていただきます。
整理券の配布は定員になり次第終了します。
[アーティスト・プロフィール]
■ 篠原有司男(しのはら うしお)/ 芸術家)
1932年東京生まれ。1953年東京芸術大学美術学部油絵科入学。1957年同校中退。
1960年に日本では画期的な無審査自由出品形式の展覧会「読売アンデパンダン展」で活躍していた赤瀬川原平、荒川修作、吉村益信らと共に「ネオ・ダダイズム・オルガナイザーズ」を結成し、活動の場を一気に広げた。その後、「イミテーション・アート」や「花魁シリーズ」等の作品を次々と発表しながら現代アートの領域を果敢に切り開く一方で、当時の美術界に「これが芸術か?」という議論を巻き起こした。また、ボクシンググローブで叩きつけるように描く「ボクシング・ペインティング」でも大きな波紋を呼び起こす。あのウイリアム・クラインに撮影されたのを機に「篠原有司男」の名は全世界に認知され、1969年には制作の拠点をニューヨークに移す。その後「オートバイ彫刻」に代表されるように、この大都市を反映してエネルギーに満ちた作品を制作し、旺盛な創作意欲で発表を続けている。「ギューチャン」の愛称で知られ、アートのみならず様々な活動を展開している
[アーティスト・コメント]
わ!パリのメトロの入り口からオルレアンの聖女・ジャンヌダルク様が兎と蛙を同乗させ、騎馬姿で出現。時は桃山、秀吉の天下、五条大橋は花をかざして踊る男女で一杯の横からストロベリーアイスクリームを高く差し上げた自由の女神がニョッキリ!四条河原は鐘、太鼓、三味線の合奏で人気太夫が登場すれば、異形を競う傾きものも大昂奮、腰に挿した自慢の赤鞘(あかざや)に“いきすぎたりや”の金文字も派手派手しい。前衛作家・篠原有司男ことギューチャン得意の早技でレリーフキャンパスに描きまくったパノラマ、新洛中洛外がここに出現せり。
[タイトルについて]
タイトル中の「イキスギタリヤ」は、京の都を洛中と郊外の洛外に分けて町の賑わい、名所旧跡、四季折々の行事や祭り、時の権力者の建築物などを描いた「洛中洛外図」の中の五条大橋や四条河原の部分に描かれる若者(かぶきもの)の刀の鞘(さや)に書かれた「いきすぎたりや」という文字からインスピレーションを受け、つけられたものです。
当時「かぶきもの」の間では、「いきすぎたりや(生きすぎたりや)」は合言葉でした。「かぶきもの」とは徒党を組んで喧嘩を仕掛ける若輩たちのことで、語源は「傾き者」、すなわちまっとうではない者という意味であり、「かぶきもの」を演者が舞台上で演じたのが始まりで「歌舞伎踊り」となります。(※リリース内では「かぶきもの」については著者の表現により統一せず、それぞれの表記しております。)
新作である「洛中洛外 京都・パリ・ニューヨーク」のベースにもなっているのが、洛中洛外図屏風の三大名作(町田本、上杉本、舟木本)の中でも一番ユニークだといわれる舟木本で、2,728名の人々が描写されており、現在は東京国立博物館蔵。重要文化財に指定されています。
サブタイトルでもある「早く、美しく、リズミカルであれ」というのは篠原氏のモットーともなっている三原則です。この姿勢は、1957年、当時来日していたアンフォルメルの騎手の一人、ジョルジュ・マチウのパフォーマンスを目の当たりにして導きだされたものです。
[展示構成/作品解説]
405階 KPO GALLERY
■新作「洛中洛外 京都・パリ・ニューヨーク」
天下人、秀吉の治世の下、京都五条大橋を舞台として、かぶきものなどが繰り広げる活気に溢れるシーンに加え、自由の女神も登場。その上、馬に騎乗したジャンヌ・ダルクまでがパリのメトロの入り口から姿を現す。混沌、カオス、ゴチャマゼのイメージを立体的に制作、ギューチャン得意の力強いドローイングで表現します。
6階 KPO HALL
■「セザンヌについて語る二匹の蛙」
黄金の毒カエル!ニューヨークの自然史博物館。そこで2年前、生きたチビッコ毒ガエルたちがピョンピョンはね廻っていた。20数個の各ガラスケースはそいつらの環境に合わせ生の自然が再現され、枯葉や木の根、岩影からとび出すやつ、木の枝の上で昼寝する青緑の肥ったやつ、毒蛇もたじたじの超極彩色。中でも我が目を釘付けにしたのが4〜5センチの黄色のやつで、前足を突っ張らせ天を仰いで不動の姿勢。その前を毛色の変わったやつらが次から次へと出て来て数秒見合いをすると、パッと岩影に消える。この黄色の皮膚から出る毒を矢の先に塗って打てばジャガーをも倒す。人間なら、1ダースは軽いらしい。こいつらをダンボールで制作、2匹押し込んだ!
このジオラマ仕立ての背景は、カエル好きなミミズでもコ−ロギでもアリでもない、フランス後期印象派の巨匠、ポール・セザンヌのサンビクトワ−ル山と水浴画である。
黄色の猛毒は、もうすぐ世界に伝氾するのでは? (かえる新聞より)
「イキスギタリヤ! 前衛の道からの絶景」
深夜、大阪は東心斎橋のとある酒場。そこは最強かつ伝説のアーティスト、エノチュウこと榎忠の行きつけの店で、なぜかそこにギューチャンがいた。これ自体が事件であった。ギューチャンはすべて高速。描くのも、喋るのも。もちろん生きることも。ギューチャンの幻の名著『前衛の道』が復刻されるから、ヒップホッパーたちも、アーティストをめざす皆さんも、みな読みなさいよ。コトバや意味を超えて、スピード上げてふり切れば、世界のリアルが変わるんだという秘密がわかるから。
その夜のギューチャンは、絶好調で、ゴッホ、セザンヌはぶっちぎって、急に立ち上がってマンボやロカビリーまで歌い出す。そして、話はワープして、洛中洛外屏風の話になり、「五条の橋の上に若衆っていうか、イカシた歌舞伎モンたちがいて、その長げえ刀の鞘に書いてあんだよ、イキスギタリヤって」。やにわにペンをつかみ僕のノートに3秒でその歌舞伎モンをスケッチした。やるなあ、ギューチャン!! なんて最高の夜なんだ。
さて、ギューチャンこと篠原有司男は、モヒカン頭とボクシングペインティングばかりがクローズアップされ、その作品が提示する予言的世界が正しく評価されてこなかった気がする。戦争のあとの虚無の景色を生きるには、主義や経済を超えて、感覚の強度の極致へメーターをふり切ることが必要で、「エクストリームの表現」という視点から、もう一回、「前衛芸術」の「再編集」が求められるのだと僕は思っている。スーパーフラットもいいけれど、過剰による自己破壊もまた、創造=サヴァイヴァルなのだと、ギューチャンの作品は、世界に対して、今つきつけているのである。
「前衛って何?」なんて質問したら、「そんなのカエルにきけ」って、ギューチャンはおそらくそう言うだろう。ヒトを超えた世界からこの世を見たスゴミがここにある。
さあ、千客万来、御高覧あれ!
これは篠原有司男・ギューチャンの、74才!イキスギタリヤ前衛人生の、絶景なのである!!
後藤繁雄
(本展プロデューサー/KPOコミッティー・メンバー/京都造形芸術大学ASP芸術表現・アートプロデュース学科長)
○グッズ販売
「ギュウチャン・エクスプロージョン! プロジェクト」 篠原有司男著作
篠原有司男 『前衛の道』(完全復刻版)
『篠原有司男ドローイング集 毒ガエルの復讐』
対談集 『早く、美しく、そしてリズミカルであれ』
「ギュウチャン・エクスプロージョン! グッズ」など

|