アウト•オブ•タイム
MoMA The Museum of Modern Art
Out of Time: A Contemporary View
Contemporary Galleries, second floor
August 30, 2006–April 9, 2007
会場風景
©S.Yoshida
本展は、現代美術常設展示室での時間をテーマにしたコレクション展。(作品入れ替えは、谷口吉生デザインの新館がオープンして三度目になる。)
本展はテーマに基づいた展示形式をとっている。年代順ではなく、テーマにそって展示する手法は、すでに一般的なものとなりつつあり、現代美術の展示であれば当然といえなくもない。
Luc Tuymans (Belgian, born 1958)
The Secretary of State
2005
Oil on canvas
18 x 24 3/8" (45.7 x 61.9 cm)
Fractional and promised gift of David and Monica Zwirner
© 2006 Luc Tuymans
時間をテーマにした展覧会自体もさほど真新しいものでもないが、本展の見所のひとつは、新収蔵作品の展示にある。たとえば、リュク•トイメン(Luc Tuymans, Belgian, born 1958)の “The Secretary of State”2005 のように、最近画廊で発表された作品が美術館で鑑賞できる。
Rineke Dijkstra (Dutch, born 1959)
Almerisa, Asylum Center, Leiden, The Netherlands, March 14, 1994.
Chromogenic color print
13 ¾ x 11" (35 x 28 cm)
The Museum of Modern Art, New York
Acquired through the Robert B. Menschel Fund and the generosity of Leila and
Melville Straus
© 2006 Rineke Dijkstra
リニケ•ダイジキストラ(Rineke Dijikstra Dutch, born1959)の“Almerisa, Asylum Center, Leiden, The Netherlands, March 14, 1994、”に始まる8枚のシリーズもまた新収蔵作品。ボスニア難民の少女を約18ヶ月毎11年にわたって撮影したもの。東ヨーロッパ出身の少女が、西ヨーロッパ文化にとけ込んでいく様を、ファッションや、まなざしのうちにとらえる。少女から思春期、そして大人に成長する過程というよりはむしろ、一連の変化、あるいは移行そのものをとらえようとしたプロジェクト。 サイコロジカルな要素をふくみ、単純なドキュメンタリーとは異なった被写体へのアプローチを感じさせる。
Rineke Dijkstra (Dutch, born 1959)
Almerisa, Leidschendam, The Netherlands, March 19, 2000.
Chromogenic color print
13 ¾ x 11" (35 x 28 cm)
The Museum of Modern Art, New York
Acquired through the Robert B. Menschel Fund and the generosity of Leila and
Melville Straus
© 2006 Rineke Dijkstra
ピピロティー•リスト(Pipilotti Rist Swiss, born 1962)の “Ever is Over All”もまたサイコロジカルな作品といえる。壁二面に映し出されるのは、暴力的なシーンと花畑のような平和的なシーン。それらが、スローモーションでリンクする。 素人手品の種明かしのようでもありながら、リストの世界観、あるいは宇宙観が、一貫して作品のベースにあることを再発見できるインパクトのあるビデオインスタレーション。十年近く前の作品だが、古さを感じさせない。
会場風景
©S.Yoshida
一部屋の展示室が与えられているのは、ビデオ作家以外では、レイチェル•ホワイトリード(Rachel Whiteread, British, born 1963)、ロバート•ゴーバー(Robert Gober, born 1954)、マーチン•クリード(Martin Creed, British, born 1968)、そしてゲルハルト•リヒター(Gerhard Richiter, German, born 1932)。
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会場風景
©S.Yoshida
印象的だったのは、リヒターのレッド•アーミーメンバーの獄中死をテーマにした15点のペインティング“October
18, 1977”1988。そして展覧会入り口のアンディ・ウォーホル(Andy Warhol 1928-1987)の
“Empire”とフィリップ−ロカ・デコルシア(Philip-Lorca Dicorcia, born1953)の”Head
#10”の対比。この対比は、異なった時間の概念を示唆するようで興味深い。しかしながら、全体的な印象をいえば、個々の作品が目立ちすぎて、一貫したテーマが見えにくい。
現代美術の歴史は進行形であり、常に更新され、書き換えられるもので、現代美術展示室は少なくとも一年に一度は展示替えをするというのがモマのポリシーだそうだ。確かに短いサイクルでの作品入れ替えだが、この方針にそった展示替えであったかどうかは、来館者自身に見極めてもらうことにしよう。_S.
Yoshida