20世紀の人々:オーギュスト・サンダーのドイツ肖像写真展
メトロポリタン美術館
5/25~9/19,2004
Young Farmers, 1914,
Gelatin Silver Prints
©
2004 Die Photographische Sammlung/SK Stiftung Kultur-August Sander Archiv,
Cologne/ARS, NY
オーギュスト・サンダー(1876ー1964)は、ドイツ写真のパイオニアとして知られる。「20世紀の人々」は、彼の最も著名なプロジェクトで,1911年から1952年の間に撮影されたドイツ市民の姿を収めたもの。イメージは、7つのカテゴリーに分けられている(農民、職人、女性、政治家や学者、アーティスト、都市の人々、障害者)。本展では、中でも代表的な写真約150点が展示された。
Boxers, 1929
Gelatin Silver Prints
©
2004 Die Photographische Sammlung/SK Stiftung Kultur-August Sander Archiv,
Cologne/ARS, NY
Pastrycook, 1928
Gelatin Silver Prints
©
2004 Die Photographische Sammlung/SK Stiftung Kultur-August Sander Archiv,
Cologne/ARS, NY
Bricklayer, 1928
Gelatin Silver Prints
©
2004 Die Photographische Sammlung/SK Stiftung Kultur-August Sander Archiv,
Cologne/ARS, NY
サンダーと写真とのかかわりは、炭坑で働いていた少年時代に、そこを訪れたカメラマンが風景写真のための道案内を彼に求めたことにはじまったという。写真を学び、ドイツ・アバンギャルドに触れ、中でも作品に辛らつな社会批判を投影した画家、オット・ディクスとは友人同士だった。
オット・ディクス
Painter [Otto Dix], 1924
Gelatin Silver Prints
© 2004 Die Photographische Sammlung/SK Stiftung Kultur-August Sander Archiv,
Cologne/ARS, NY
40年に及んだサンダーのプロジェクトは大戦をはさみ、ナチ台頭時には3万点ものネガが没収、破棄された。息子エリックは政治犯として捕らえられ、それが原因で亡くなっている。その戦争経験はサンダーにプロジェクトの意義を再認識させる。エリックのデスマスクで終了する「20世紀の人々」は、サンダーにとって人間の生と死の記録であったのではないだろうか。
左端、サンダーの息子、エリック。
Working Students, 1926
Gelatin Silver Prints
© 2004 Die Photographische Sammlung/SK Stiftung Kultur-August Sander Archiv,
Cologne/ARS, NY
サンダー自身の写真。
Photographer [August Sander], 1925
Gelatin Silver Prints
© 2004 Die Photographische Sammlung/SK Stiftung Kultur-August Sander Archiv,
Cologne/ARS, NY
サンダーの写真は,それぞれが独立した肖像作品として突出しているばかりでなく、タイポロジー(類型学)的な手法を用い、集合的でアーカイブ的なアートのスタイルを提示したものとして評価されている。その影響は、ウオーカー・エバンス、べッヒャ-夫妻、トーマス・シュトルート、リネケ・ダイジキストラ達に及ぶと言われている。近年、現存する約600点の写真が、再構成され、全七巻のシリーズで出版されている。
(Yoko Yamazaki)