フィリッペ・ドュ・モンテベッロイヤーズ
The Philippe de Montebello Years: Curators Celebrate Three Decades of
Acquisitions
October 24, 2008 February 1, 2009
Metropolitan Museum of Art
メトロポリタン美術館で31年間ディレクターを務めた、フィリッペ・ドュ・モンテベッロ氏が本年度末に引退する。本展は、
その功績をたたえて彼がディレクター在位中に獲得した作品を2階特別展会場で一般公開するというもの。
購入作品や贈呈された物を含めて獲得作品数は、84000点にも及ぶと言う。今回、そのなかから300点が公開されている。興味深いのは、その展示。古代ギリシャ・ローマ美術品から現代アートまで、18世紀アメリカンロココ様式のピクルス用磁器からゼゴビアが愛用したと言うハウザーのギター、17世紀の日本の琴等々と、様々な様式と時代、そしてジャンルの品々があえて分類されずに展示されている。入館者にとっては、所蔵作品をよりどりみどりに観覧できる指向である。それでも、
会場に入ってすぐに目に飛び込んでくる、ルーベンスが若く美しい二番目の妻ヘレーナを讃えて描いたと言われる家族の肖像画と18世紀アメリカの著名な肖像画家ラルフ・アールのある商人の肖像や、
古代ギリシャのドレス(ヒマシオン)をヒントにしたというマダム・グレのシルクドレスのわきの大理石でできたアテナ神頭部など、見る側にさりげなく作品を比較させる配慮のある配置が感じられる。
モンタベッロ氏が初めてメトロポリタンに関わったのは1963年、ヨーロッパ絵画の学芸科部門だったと言う。そのせいか、本展の最後をかざるのは、レオナルド、ラファエロ、テツィアン、パルミジャニーノ、そしてルーベンス等、巨匠達のドローイング。かなり大掛かりな展示に驚かされ、その最後に至って、つい足をとめて見入らせる作品の質の高さにまた驚かされる。
本展のカタログは、美術館のサイトでオンライン化されていて、誰もがインターネットでアクセス可能。作品のイメージとともに学芸員たちのコメントも読むことができる。(下記参照)モンタベッロ氏の功績はもちろんのこと、文化的施設としてのメトロポリタン美術館の懐の広さを改めて感じた展覧会。(Yoko
Yamazaki)
・オンラインカタログ:
http://www.metmuseum.org/special/philippe_de_montebello_years/index.aspx