ジャン・エリオン展
Jean
Helion
7/14— 10/9、2005
ナショナル・アカデミー美術館
National
Academy Museum
1083
Fifth Avenue at 89th Street
Circular tensions n° 1, 1931-32
Oil on canvas, 29 ½ x 29 ½ in.
Private collection
フランス人アーティスト、ジャン・エリオン(1904−1987)は、戦後アメリカの抽象絵画の発展に貢献した人物として知られる。(アド・ラインハルト(1913−67)は、1930年代後半から40年代のアメリカの抽象絵画は彼無しではあり得ないと語っている。)本展は、エリオンの生誕100年を記念したパリ、ポンピドーセンターの企画展覧会(12/8、2004—3/6,2005)が巡回したもの。パリでの展示に比べ、かなり縮小しているようだが(本展では39作品が展示されている)、先日終了した
ゲッッゲンハイムでのヒラ・リーベイの展覧会のようにアメリカの現代美術史をさぐる展覧会。
20代、エリオンは、ジャン・アルプ、テオ・ファン・ドースブルフらと
抽象芸術グループ(Abstraction-Création)を設立し、ピエト・モンドリアンやアメリカ人ではアレクサンダー・カルダーらとも交友があった。1933年には、当時ニューヨーク大学の構内にあった現代美術ギャラリー、A.
E.ガラティン(Gallatin)のチーフ・アドバイザーとなり、アルプ、モンドリアン、ヘンリー・ムーア、ベン・ニコルソンらのヨーロッパの抽象作家をアメリカに紹介した。ところが、1930年代半ば以降、彼は次第に抽象から離れ、具象的な表現へと移行する。1944年、アメリカで具象作品の発表を行なっているが、彼の抽象作品を知る批評家達からは酷評を受けたという。
Défense d’, 1943
Oil on canvas, 40 x 31 7/8 in.
Collection of Daniel Malingue
けれども抽象から具象への変遷は決して時代への逆行ではなかったように思える。シルクハット、雨傘、マネキンが30年代以降の作品によく登場するが、これは、マグリッドなどシュールレアリズムの作家も好んだモチーフ。
特にパンプキンが彼のお気に入りだったようだが、自然のモチーフについては、“最高の複雑性を提供するもの”と語っている。1960年以降エリオンは、より日常的な生活風景を描き、ポップ・アートとの関連で語られるようになる。1981年、新しい絵画の可能性を探るニュースピリット・イン・ペインティング展がロンドンで開かれた際、エリオンはフランシス・ベーコン、アンゼルム・キーファー、ゲルハルト・リヒター、ウィリアム・デ・クーニング、アンディー・ウオホールらと共に選抜されている。
Nude leaning on elbow, 1948-49
Oil on canvas, 45 x 31 in.
Collection of David Hélion
私たち日本人にとってエリオンの名前は、例えばほとんど同世代のベーコン(1909−92)と比べると馴染みがうすいかもしれない。
しかし、
一人の作家の背後にある大きな歴史の流れに気づく時、その作品は、また違う見え方であらわれてくるようだ。(Yoko
Yamazaki)