P.S.1 Contemporary Art Center P.S.1 現代アートセンター
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P.S.1 入り口 ©S.Yoshida
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住所 22-25 Jackson Ave. at 46th Ave.
Long Island City, New York 11101
電話 (212) 718-784-2084
水 ~ 日 12:00P.M.~6:00P.M.
一般 任意
技法的「後味の悪い」ミュージックビデオ:クリス・カニングハム
部屋はアイスランド出身ビョ-クの歌声で満たされ、壁一面に片栗粉のように白い画面が浮き上がる。画面の中には人間の表情と体の丸みをもった滑らかなヒューマノイド。
ヒューマノイドは周りを囲むロボットに支えられるようにして誕生。たくさんの細かな動きが繰り返され、ミルクのように白い液体が流れつづける中もう一体のヒューマノイドに出会う。二体は機械的豊かな表情を交し合い、お互いに触れ合う。胸部の膨らみから両方女性である。接吻を交わしビョ-クの声でAll
is Full of Loveを歌い上げ絶頂に浸る。
マシーンの冷たさ硬さを包み込む純白、流れつづける蕩ける液体。始めて見る種類の官能世界である。All
is Full of Love (1999)
英国生まれのカニングハムは美大に進む代わりに17歳の時から映画界で特別効果アーティストとして働き、1995年からミュージック・ビデオを手がけ始めた。SF、ホラー、B級映画の手法用いて、現代の急激なテクノロジーから生まれたファンタジーをユーモアと皮肉で解釈したのが今回のようなビデオ・アート作品だ。
もう一作品ここで紹介したいのはWindowlicker
(1998)。カリフォルニアの椰子の木並木、コンバータブル・ロールスロイス、ごっつい金のネックレス、バングル、派手にセクシーなダンサー。これらの一般的なラップ・ミュージックのプロモーションビデオの特色をパロディ化したのがこの作品。ティーバックビキニで踊る背後からのショットに鑑賞者が釘付けになったとき、「女性」は振り向き焼き爛れたエイリアンのような顔を露にする。結構ショッキングである。
カニングハムは自分の長年のプロフェッショナル・バックグラウンドを最大限に生かしている。特にコマーシャル・ミュージックビデオの「鑑賞者の目を惹きつけて離さない」原則が彼のビデオアート作品の基本になっている。スピード、音楽、魅力的な踊りやおもしろいロボットの動きに見る者は引き付けられる。ただキャッチーさに引き込まれ通常は「かっこいい!」で終わるミュージック・ビデオだが、カニングハムの作品では「後味の悪さ」が残る。目が離せないところでトランス・セクシャルやオーバー・セクシャリズムなどの課題に直面させる、これがカニングハムの技法である。
もしカニングハムが一般的なミュージック・ビデオの技術を捨てたらどういう作品が生まれるだろうか。例えばスローで、ただノイジーで、魅力的な踊りも動きもないビデオ。?に似た作品になるだろうか。カニングハムの作品は技法こそ違ってポップでキャッチーだが、他のビデオアート作品と同等である。
Miya Hideshima
注) 写真については、後日、掲載します。