テソロス(宝物)展
Tesoros/ Treasures/ Tesouros: The Arts in Latin America,
1492-1820
9/20−12/31、2006
Philadelphia Museum of Art
1492年のコロンブスのアメリカ大陸発見
に始まり、スペイン・ポルトガルの植民地時代から1820年代の独立期までの約300年間にわたるラテンアメリカ美術を紹介する展覧会。ニューヨークのグッゲンハイムでも数年前にブラジル展、アステカ展が開催されたが、本展はペルー・ボリビア・エクアドルなどラテンアメリカ全土に視野を広げたもの。
Luis Niño (Bolivian, active Potosí, c. 1730s).
The Virgin of the Rosary with Saint Dominic and Saint Francis of Assisi, c.
1737.
Oil on canvas,
37 15/16 x 29 15/16 in.
Museo de la Casa Nacional de Moneda, Fundación Cultuural BCB, Potosí, Bolivia.
Cat. VI-98
大陸発見後15世紀初頭にはスペインの武将ヘルナン・コルテスがメキシコに到着し、ヨーロッパ文化
とはかけ離れたアステカ文明に遭遇する。コルテスは、アステカの珍品を
神聖ローマ皇帝カール5世に献上しているが、それらの品々をブルッセルで目にしたのは、ドイツ人アーティスト、アルブレヒト・ドュラーだった。1520年、ドュラーは、色鮮やかで精巧な遥か彼方の大陸の工芸品に驚嘆したことを日記に記している。ところが、その翌年にはコルテスはメキシコを武力で征服する。ヨーロッパ文明とアメリカ土着文明の出会いは決して平和的ではなかったことは歴史の中で多く語られるところ。
しかし本展は、キリスト教の伝播を軸に、異質の文化同士がどのように融合し独自のものを生み出していったかを、
絵画、彫刻、工芸、建築の世紀ごとの推移を通して検証している。
Alterpiece of the Virgin of Sorrows (Mexico, c. 1690).
Gilt and polychromed wood,
oil on panel, oil on canvas, silver, cloth.
20 feet 2/ 5/16 in. x 13 feet, 11 7/16 x 29 1/8 in.
Fundación Televisa A.C., Mexico City. Cat. VI-15
Andrés Sánchez Gallque (Andean, active late 16th-early 17th
century).
Don Francisco de la Robe and His Sons Pedro and Domingo,
1599.
Oil on canvas, 36 π x 68 7/8 in.
Museo Nacional del Prado, Madrid, Deposited in the Museum de América, Madrid.
Cat. VI-70
また、ヨーロッパの大航海時代、工芸美術品を通して様々な世界とのつながりをとらえようとする。例えば、寓意を描いた縦長の折りたたみ式パネル、ビヨンボがある。その語源は日本語の「屏風」という。ビヨンボは、ヨーロッパ絵画の伝統、アジアの技法、そしてラテンアメリカの素材が結合した工芸作品というわけだ。そこからは世界の粋を知る裕福な美術作品の依頼者が存在したこともうかがわれる。そして奴隷制も。時代が下るごと、
聖像の中には、黒人や南米生まれの聖人が登場するようになる。その中の一人は、奴隷労働とヨーロッパ伝来の風土病から加護する聖人として信仰されたと紹介されていた。
この展覧会に、ヨーロッパからの一方的な視点を感じた観覧者もいたかもしれない。それでも世界とアメリカとの出会いの時代を振り返り、ラテンアメリカへの関心を深めるきっかけになったのではないだろうか。本展に提携して、美術館のプリントギャラリーでは、メキシコと近代版画展を開催した他、ペンシルバニア大学付属考古人類美術館でも“Under
European Eyes: Conquistadors and Arts of the New
World.”展を開催。その他美術館近隣のギャラリーでもラテン文化に関するイベントが行われた。いずれも注目を集めた企画となったようだ。本展は、2007年の秋にかけてメキシコ、ロス・アンジェレスへも巡回予定。(Yoko
Yamazaki)