リチャード・タトル展
The Art of Richard Tuttle
11/10、2005〜2/5、2006
ホイットニー美術館
Whitney Museum of American Art
タトル(1941−)のデビューは、1965年ベティー・パーソンズギャラリー。その後エバ・ヘッセ、ブルース・ナウマン、そしてリチャード・セラ等と並び、ポスト・ミニマリストを代表するアーティストの一人となる。 本展は、タトルの約40年間のアートを回顧するもの。サンフランシスコ美術館で企画され、ホイットニーの後、ダラス、シカゴ、ロサンジェルス等を巡回する。
Richard Tuttle
Colored Line Series (1), 1969
Gouache and graphite on paper; 12 x 9 in.
Kolumba, Cologne, Germany
© Richard Tuttle
Photograph © Lothar Schnepf / Kolumba, Cologne, Germany
Richard Tuttle
Drift III, 1965
Acrylic on plywood; 24 1/4 x 52 3/4 x 1 1/4 in.
Whitney Museum of American Art,
purchase with funds from Mr. and Mrs. William A. Marsteller
and the Painting and Sculpture Committee;
© Richard Tuttle
Photograph by Geoffrey Clements
年代ごとにタトルの14のシーリーズ作品を展示する本展は、
60−70年代のドローイングから始まる。時代が下るごと、紙の上のドローイングがそのままキャンバスや板、針金やロープなど様々な素材に移行して表現されていくようでもある。タトルがデビューした60年代は、ドローイングには線(Line)、絵画には表現形式(Form)、そして彫刻には外形、形状(Shape)というように特定のメディウムへの規定概念が強く存在していた頃。
本展を企画したキュレーターのグリンズテイン(サンフランシスコ美術館)は、タトルの作品は、そんなペインティング、ドローング、そして彫刻の境界を解くものだったと語る。
また、巨大な作品が好まれた70年代、タトルは、スケールへの検証を促すかのようにわずか数センチの小さな作品(ロープピースなど)を制作している。80年代以降は、コルク、ベニヤ、ダンボール、トイレットペーパーにおがくず等、多様な素材を取り入れていく。小さな作品を床に沿って展示したり、あえて壁面の中央をさけ、コーナーやエッジを意識したインスタレーションを行なうのもタトルの特徴。
Richard Tuttle
Purple Octagonal, 1967
Dyed canvas and thread; 54 7/8 x 55 1/2 in., orientation variable
Museum of Contemporary Art, Chicago, gift of William J. Hokin
© Richard Tuttle
Richard Tuttle
3rd Rope Piece, 1974
Cotton and nails; 1/2 x 3 x 3/8 in.
National Gallery of Art, Washington
© Richard Tuttle
ホイットニーでは、1975年にタトルの最初の個展が開催された(キュレーター:マルシア・タッカー)。 作品とスペースの関係を問い直すべくキャンバスやロープをそのまま床に並べる展示を行なっている。しかし、“退屈で無駄、”“まるで経費を出し惜しみしているよう”など 、非常に否定的な批評が多く、物議をかもした展覧会となったようだ。
Richard Tuttle
Waferboard 4, 1996
Acrylic on waferboard; 29 1/2 x 18 x 1/4 in.
Collection of Henry S. McNeil, Philadelphia;
© Richard Tuttle
Photograph by Tom Powel, courtesy Sperone Westwater, New York
ホイットニー美術館ディレクター、ワインバーグは、プレス公開で当時の展覧会を振り返りつつ、タトルの作品は常に疑問を投げかけるものだと語り、自由でユーモラス、しかも控えめ、まるで彼の人柄そのものだと述べた。プレス公開にはタトル自身も姿を見せた。あなたにとっての制作とは何かと聞いたところ、タトルは、概念にとらわれないオープンな視点を提供すること、そして自分の作品に寄って社会が純粋になることを望んでいると答えた。社会とアートとアーティスト、三者のつながりを意識した回答だった。 (Yoko Yamazaki)
展覧会会場で語るタトル
Photo© S. Yoshida