グローバル・フェミニズム展
Global Feminisms
3/23−7/1、2007
ブルックリン美術館
Brooklyn Museum
Boryana Rossa (Bulgaria, b. 1972)
Celebrating the Next Twinkling (Praznuvane na sledvascia mig), 1999
Single-channel video, color, sound, 2 min. 45 sec., edition of 2
Private collection
(Photos: courtesy of the artist)
女性の地位向上を謳ったフェミニズムがアメリカにおいてアートの文脈で語られ出したのが1960〜70年代。その動きが脱構築の思想の影響を受け、多元的に広がっていったのが1980年代。しかし、本展はフェミニズムという一つの歴史的な流れを検証するのではなく、1990年代以降のフェミニズムをより広義な意味合いから探ろうとしたもので、本展タイトルもあえてFeminismの複数形Feminismsとしている。約50カ国から選ばれた90名近くのアーティストは、1960年以降に生まれた30代40代の女性に限られた。
Anna Baumgart (Poland, b. 1966)
Ecstatic, Hysteric, and Other Saintly Ladies
(Ekstatyczki, histeryczki i inne ´swiete), 2004
Video, color, sound, 11 min.
Lent by the artist and Zacheta National Gallery of Art, Warsaw
(Photo: courtesy of the artist)
Rebecca Belmore (Canada, b. 1960)
The Named and the Unnamed, 2002
Video installation with light bulbs, edition of 2; 7' 4 1/8" x 8' 11 7/8" (2.24
x 2.74 m)
Morris and Helen Belkin Art Gallery, University of British Columbia,
Vancouver, Canada
(Photo: Howard Ursuliak, courtesy of Morris and Helen Belkin Art Gallery, University of British Columbia, Vancouver, Canada)
アート・ヒストリアン、リンダ・ノックリン(Linda Nochlin)とその教え子でブルックリン美術館エリザベス・サックラー・フェミニズムアートセンター(Elizabeth Sackler Center for Feminist Art)のキュレーター、マウラ・ライリー(Maura Reilly)の共同企画。ことにノックリンは、フェミニズム・アート展の草分け的な展覧会“女性アーティスト:1550−1950展”をロサンジェルス・カウンティ・ミュージアム・オブ・アートで1976年に企画しており、その展覧会は翌年ブルックリンへも巡回している。ブルックリン美術館側はその展覧会の30周年記念を意識しながら、より柔軟なフェミニズム観を検証したいと述べている。展覧会カタログには、作品は全てがフェミニスト達によるものではなく、その範疇に関わる作品も網羅したことを明記している。アジア、アフリカ、南米諸国はもちろん、イスラムやユダヤといった文化の違いや政治経済的な格差も意識しつつ、EU以外のヨーローッパ圏からのアーティストを募る等広範囲な人選を行なった。
Amy Cutler (U.S.A., b. 1974)
Army of Me, 2003
Gouache on paper, 29 x 22" (73.7 x 55.9 cm)
Collection of Marsha and Michael
Gustave, New York. © Amy Cutler
(Photo: courtesy of Leslie Tokonow Artworks + Projects, New York)
Tania Bruguera (Cuba, b. 1968)
Statistic (Estadística), 1996
Textile, human hair of anonymous Cubans, thread, and fabric, 132 3/4 x 60 5/8"
(337.2 x 154 cm)
Private collection, New York
(Photo: courtesy of the artist)
本展が目指した広義のフェミニズム解釈が逆に視点を曖昧にするという辛口の批評が少なくない。文化的な生産者としての女性を強調しながら、女性アーティストに限定した点でも対男性としてのフェミニズム感がつきまとうという見方が大勢を占める。とはいえ、フェミニズム・アートへの関心が高まりつつあるのは確か。ロサンゼルスでは、ほとんど期を同じくしてWack!
Art and Feminist
Revolution展が開催された。これは、1960年代にさかのぼりより歴史的な視点でフェミニズム・アートを検証しようとしたもので、2008年にはニューヨークP.S.1にも巡回予定。またモマでも2009年にフェミニズム関連の展覧会を企画していると言い、フェミニズム・アート再隆盛の兆しが感じられる。その影には何があるのだろう。過去数年ニューヨークでは、美術館でのグループ展に選抜された不公平な男女比に対し女性アーティストグループがデモンストレーションを起こしているのは現実である。また、気がつけば観覧者は圧倒的に女性であるのも興味深い。おそらく本展の問題は、様々な作品全てを結局“フェミニズム”という枠組みで総称したことなのだろう。ニューヨークタイムズ、ロベルタ・スミスもその点を指摘しつつ、批評記事に“彼女達のうめきを聞け”とタイトルをつけている。何はともあれ、日本(澤田知子、鈴木涼子、やなぎみわが参加)を含む様々な国からの女性達のアプローチを比較検証できるのは興味深く、しばらくはフェミニズムの動向に注目してみたいものだ。(敬称略:Yoko
Yamazaki)