アニー・レイボビッツ展
Annie Leibovitz: A Photographer’s Life, 1990-2005
10/20、2006−1/21、2007
ブルックリン美術館
Brooklyn
Museum
アニー・レイボビッツは、コマーシャル・フォトの世界ではかなり名の知られた女性フォトグラファー。これまでにもワシントンDCのナショナル・ポートレイト・ギャラリーやニューヨークのICPで回顧展を行なっている。
本展のプレス公開で、普段は撮影する側のレイボビッツが多くのビデオやカメラに取り囲まれ、取材陣が作品に触れはしないかとセキュリティーが慌てる一幕もあった。1970年代に雑誌「ローリング・ストーン」のチーフ・フォトグラファーとして活躍し、その後「ボーグ」や「バニティー・フェアー」等のファッション雑誌にも関わり、現在も話題となる写真を撮り続けている。彼女が撮影したジョン・レノンとオノ・ヨーコ、あるいは妊娠中のデミ・ムーアのイメージ等は、日本の読者にもお馴染みではないだろうか。
My Parents w/ My Sisters at Peter’s Pond Beach Wainscott, LI, 1992 Photos © Annie Leibovitz From “A Photographer’s Life: 1990-2005” |
Susan at House Wainscott, LI, 1988 Photos © Annie Leibovitz From “A Photographer’s Life: 1990-2005” |
大統領や俳優等、著名人の肖像写真で評価されたレイボビィッツだが、今回の注目点は、プライベートにとったファミリー・フォトを織り交ぜたことにある。本展でさかのぼる15年は、
スーザン・ソンタッグに出会い特別な関係をもった時期であると共にレイボビッツが母になった(長年の夢だったらしい)時期でもある。90年代後半はガン再発のため闘病生活を送ったソンタッグの晩年に重なる。ソンタッグは2004年に亡くなり、その数週間後にはレイボビッツの父親も亡くなる。彼女にとっては家族的なつながりへの思いが深まった時期ではなかったろうか。
Philip Johnson at Glass House
New Canaan, Conn., 2000
Photos © Annie Leibovitz
From “A Photographer’s Life: 1990-2005”
本展と同タイトルの写真集のレイアウトのため、彼女はスタジオでボードにテスト写真をピンナップしていた。当初、コマーシャル・フォトとファミリー・フォトは異なる扱いとして、2枚のボードに分けていたが、次第にそれらを織り交ぜるようになり、単に年代順で見せることに落ち着いたと言う。本展会場にはそのピンナップ・ボードも再現されている。あたかもそのボードが出発点であるかの様にそこから選択・拡大された作品が会場に展示されている。ニコール・キッドマンやブラッド・ピットらの豪奢で大きな写真の合間に、小さなファミリー・フォトが置かれている。小さなサイズにこだわったのは、より近づいて見るべきものとの意図からだという。
プレス会見でのレイボビッツ Photo © S. Yoshida, 2006 |
プレス会見でのレイボビッツ Photo © S. Yoshida, 2006 |
本展は、壁面サイズの巨大な風景写真で締めくくられる。その展示について、彼女の写真をアート然と映すものとのやや批判的なコメントも聞かれる中、会見で彼女は「この展示がいいのかまだわからない。咀嚼に時間が必要だ。」と心中を素直に語っている。アートとコマーシャル、公と私、それらは対立するものなのか綴り合うものなのかを検証するものとして興味深い。ブルックリン美術館企画。アメリカ国内の美術館の後、パリ、ロンドンへも巡回予定。(Yoko
Yamazaki)