グッゲンハイム美術館
住所
1071 Fifth Avenue at
89th Street, NYC
電話 (212) 423-3500 月、火、水、日 10:00A.M.~6:00P.M. 金、土 10:00A.M.~8:00P.M.(金 6:00P.M.~8:00P.M.入場料金任意) 木 休館 一般 12ドル
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展覧会名
ムービング・ピクチャーズ展(Moving
Pictures)
Guggenheim Museum
6/28,2002~1/12, 2003
Moving Pictures 展:会場風景
© Y. Yamazaki
総勢55人の現代アーティストによる、写真、フィルム、ビデオ作品で構成された展覧会、ムービング・ピクチュアーズ展がグッゲンハイム美術館で開催されている。出展作品は、1960年代後半から現代までに制作された同美術館所蔵の150点。この展覧会、予定されていたマレービッチ展が資金難で来年に延期されたための臨時代行展であったが、現代において写真、フィルム、ビデオというメディウムを検証する興味深い企画となった。
Moving Pictures 展:会場風景
© Y. Yamazaki
Moving Pictures 展:会場風景
© Y. Yamazaki
若いデザイン建築家によるデスプレーの質も高い。今回の真っ白でシンプルな展示会場は、前回の“ブラジル・ボデー&ソウル“展での全館真っ黒で劇場のようなデスプレーと好対照を見せながら、作品のそれぞれをきわだたせる心地よい空間を演出している。最上階のフィルム、ビデオのコーナーでは、ブースごとの防音にも気を配り、各作品のサウンドがお互いを邪魔し合わない工夫が施されている。
ビデオのナム・ジュン・パイク,ブルース・ナウマン、OHP(Over Head Projecter)を使用するキャラ・ウオーカー、写真では杉本博、シンディー・シャーマン、ロバート・メープルソープ、リネケ・デジニクストラ、トーマス・シュトルス、アンドレア・ゴースキーそしてインスタレーションのクリスチアン・ボルタンスキ等々お馴染みのアーティストたちが次々と並ぶ。フィルムでは、南アフリカのアパルトヘイトをテーマに作品を展開したウィリアム・ケントリッジ、イスラム社会に於ける女性像を描くイラン生まれのシャリン・ネシャットもはずせないアーティストとして登場する。
Andreas Gursky, Library (Bibliothek), 1999
Cibachrome prints, Edition 2/6
200.66 x 360.68 cm
Solomon R. Guggenheim Museum, New York
Purchased with funds contributed by the Photography Committee, 1999
99.5305
Photo: David Heald
Courtesy Matthew Marks Gallery, New York
Shirin Neshat, Still From Passage, 2001
Video and sound installation, 00: 11:40, Edition 5/6
Dimetions vary with installation
Solomon R. Guggenheim Museum, New York
Purchased with funds contributed by the International Director's Council and
Executive Committee Members, with additional funds contributed by Dakis Joannou,
2001
2001.70
©2001
Shirin Neshat
Photo: Larry Barns
Courtesy Barbara Gladstone
1960年後半からの作品にしぼられたのは、その時期に写真やフィルム・ビデオが、アート作品として市民権を得てきたからだ。オリジナリティーを尊ぶモダニズムの、ハイ(高尚なもの)としての絵画・彫刻とその対義語ロー(大衆的=低俗なもの)としてのテクノロジーという二分法が崩れてきた頃である。テクノロジーの代名詞でもあった複製可能な写真、フィルム、ビデオは、ポストモダニズムと呼ばれる新しい世代のアーティスト達には、伝統的な殻を破るための可能性をひめたメディウムだった。今日では、日常的にお馴染みのデジタルカメラやホームビデオも立派なアートメディウムとして用いられる。
Robert Smithson, Sixth Mirror Displacement, form Yucatan Mirror Displacements
(1-9), 1969
9 chromogenic-development slides (exhibition prints, 2000)
30.5 x 30.5 cm
Solomon R. Guggenheim Museum, New York
Purchased with funds contributed by the Photography Committee and with funds
contributed by the International Director's Council and Executive Committee
Members, 1999
99.5269
©Estate
of Robert Smithson/Licensed by VAGA, New York, NY
新しいテクノロジーによってアーティスト達が模索し続けるものは、新しい表現形体の可能性とそれによって打ち出される新しい視点だ。1969年にロバート・スミッソンは、時間、記憶、イメージへの検証を図り、写真と鏡(絵画的なイメージという要素を含む)そしてアースワークを同居させた。これは、伝統的な絵画や彫刻というメディウムへの挑戦であった。時代が進み、写真、フィルム、ビデオあるいはテレビが大々的に普及する中、アーティストは、メディウムそのものの区分けをも疑問視するようになる。例えばアンナ・ガスケル、スタン・ダグラス、サム・テーラーウッドなど、そこには絵画、フィルム、写真、ビデオ、テレビ等の様々な表現スタイルが混在する。
Anna Gaskell, untitled #5
(wonder), 1996
C-print, A.P. 2/2
122.1 x 102.2 cm
Solomon R. Guggenheim
Museum, New York
Purchased with funds
contributed by the Young Collectors Council, 1997
97.4580
Photo: Ellen Labenski
Sam Taylor-Wood, Soliloquy III, 1998
C-print, Edition 4/6
211 x 257 cm
Solomon R. Guggenheim Museum, New York
Partial and promised gift, David Teiger, 2000
2000.105
Photo: David Heald
Courtesy Matthew Marks Gallery, New York
Stan Douglas, Nu.tka., 1996
Single-channel color video
projection and quadraphonic soundtrack, 00:06: 05
Edition 1/2
Site-specific dimentions
Solomon R. Guggenheim
Museum, New York
Gift, The Bohen Foundation
2000.59
Photograph by © Solomon R.
Guggenheim Museum, New York
Photo: Ellen Labenski
これらの作品が今後どのような展開を見せるのか。Moving
Pictures展というタイトル、”動く”という意味の他に、それらが変貌し続ける表現であるという意味も込められているように思える。
(Yoko Yamazaki)