ジョン・シュナイダー展
Joan Snyder:A Painting Survey, 1969-2005
8/12−10/23、2005
The Jewish Museum
Fifth Avenue at 92nd Street, NYC
本展は、ニュージャージー出身、ブルックリン在住の女性ペインター、シュナイダー(1940−)の1969年から現在までの作品の軌跡をたどるもの。
シュナイダーは、ロシア系ジューイッシュ移民の母とアメリカ人でドイツ系ジューイッシュの父との間に生まれた。生活に追われる両親のもと、幼少時代、美術館とは無縁の生活を送った。ソーシャルワーカーを目指していた大学時代、選択科目として受講したペインティングのクラスが、その後の彼女の方向を決定づける。強い自己表現欲を持ちつつそのはけ口をつかめなかった彼女は、ペインティングがその糸口だと感じたようだ。大学卒業後ソーシャルワーカーにはならず、ラットガーズ(Rutgers)のMFAプログラムに進み、ペインティングを専攻する。60年代の当時はミニマリズムの全盛期で、教授陣には、ミニマリスト、ロバート・モリスもいた。ペインティングでは、感情を削除・隠蔽したような幾何学的なグリッド(格子)が登場した時代だが、シュナイダーにとってのペインティングは、感情を露出するものだった。70年代、彼女は、ミニマリスト的なグリッドに対し、より表現主義的なストローク(筆致)による作品を発表して注目を集めた。
Joan Snyder (American, b.
1940), Lines and Strokes, 1969, oil,
acrylic, spray enamel on canvas, 40 x 52 in.
Collection of the Artist.
Photo: © 2005 Alan Zindman
Joan Snyder (American, b.
1940), Women in Camps, 1988, oil,
acrylic, wire, wooden dowel, photographs on linen mounted on board, 22 x 48 in.
Collection of Richard and Terry Albright.
Photo by Greg Heins
シュナイダーは、布・草花・木片などを画面にコラージュする作品も制作する。スタイルの変遷にともない抽象表現主義、詩的抽象、あるいはフェミニズムの流れで彼女を評価する動きがあった。そうしたアカデミックな批評の動向とはうらはらに、彼女の制作は一貫して実生活と深く関わっていたようだ。ジューイッシュの歴史、AIDSなどの社会的な問題に加え、出産、育児、離婚、友人や両親の死去など、人生の過渡期が彼女のペインティングに表現される。本展では、約40年間の彼女の自伝を見せられる様な感覚がある。しかし、その40年は、ペインティングが単なる個人的感情のはけ口ではなく歴史的文化的社会的な要素を加味する希望的なメディウムであると、彼女が気づく軌跡でもあるようだ。(Yoko
Yamazaki)
Joan Snyder (American, b.
1940), The Cherry Tree, 1993, oil,
acrylic, silk, papier-mâché, rice paper, straw on linen, 66 x 57 in.
Collection of Richard and Terry Albright.
Photo © Zindman/Fremont
Joan Snyder (American, b.
1940), Ah, Sunflower, 1994, oil,
acrylic, papier-mâché, cheesecloth, herbs, and wood on canvas, 74 x 111 in.
(w/4" shelf). Collection of Roger
N. Mayer