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-CONCEPT-OLD記事

セザンヌからピカソ:前衛のパトロン、アンブロワーゼ・ボラール展

Cézanne to Picasso:

Ambroise Vollard, Patron of the Avant-Garde

9/13、2007—1/7、2006

メトロポリタン美術館

Metropolitan Museum of Art

 

本展のタイトル「セザンヌからピカソ」は、19世紀から20世紀美術の本流を示唆する様な印象を与えるが、その主役はフランスの伝説的な画商と呼ばれたアンブロワーゼ・ボラール(1866−1939)。取り扱ったのは、ルノワール、セザンヌ、ヴァン・ゴッホ、ポール・ゴーギャン、オディオン・ルドンのほか、モーリス・ドニ、ピエール・ボナールらのナビ派やアンリ・マチスやアンドレ・ドランらフォービズム、そしてパブロ・ピカソなどの当時のいわゆる現代作家達。その作品が現在、オルセーやプチ・パレ等のフランスの美術館はもちろん、ベルリン・ナショナルギャラリー、セント・ペテルツブルグのエミルタージュ、そしてニューヨークのメトロポリタン等、世界で主要な美術館に収蔵されている。

 

 

Paul Cézanne (French, 1839-1906)

Ambroise Vollard, 1899

Oil on canvas

39-3/4 x 31-7/8 in. (101 x 81 cm)

Petit Palais, Musée des Beaux-Arts de la Ville de Paris

Photo credit: Petit Palais © Photothèque des Musées de la Ville de Paris / Pierrain

 

ボラールは、法律を専攻しながら画商に転身し、20代でパリに画廊を開く。1895年29歳の時、セザンヌの回顧展を企画。その成功が彼の画商としての名を決定づけるとともに、まだ無名に近かったセザンヌを近代美術の父にしたと言われている。本展では、セザンヌ初期の作品、例えば「三人の水浴者 1879−82」(まだ無名だったマチスがなけなしのお金で購入したと言う)や「愛の戦い1880」(ルノワールが当時100フランで購入)などが紹介され、当時の展覧会の様子とその反響を振り返ることができる。

本展の特徴は、それぞれの作品について、ボラールがどのように取引をしたかについての情報が提示されていること。様々なエピソードからは、アートを愛し、若く無名の作家達を発掘しながら、コレクターではなくあくまで画商として冷静に利潤を図ったボラールの姿が浮き彫りにされる。アーティストにとってのボラールは、必ずしも信頼が置ける存在ではなかったようだ。例えば、ゴーギャンとボラールのあいだにはすれ違いが絶えず、本展の圧巻、ボストン美術館所蔵のゴーギャンの大作“我々はどこから来たのか、我々は何者なのか、我々はどこへ行くのか(1897)”をめぐっては、次の様な逸話がある。ちょうどパリ万博のころ、脚光を浴びる絶好のチャンスとばかりゴーギャンはタヒチで力作を仕上げ、パリのボラールに画商としての手腕を大いに期待したようだ。しかし、ボラールはその作品のプロモーションには消極的で画家の予想を下回る値段で無名のコレクターに売却したという。ゴーギャンはボラールを“達の悪いワニ”と呼び、ボラールの方では彼を“疑り深くわがまま”と称したらしい。とはいえ、ボラールの存在がなったなら、ゴーギャンは世に出ることができなかったかもしれない。

 

 

 

 

Pablo Picasso (Spanish, 1881-1973)

The Two Saltimbanques (Harlequin and his Companion), 1901

Oil on canvas

28-7/16 x 23-3/8 in. (73 x 60 cm)

Pushkin State Museum of Fine Arts, Moscow

Photo credit: © Pushkin State Museum of Fine Arts, Moscow. © 2006 Estate of Pablo Picasso/Artists Rights Society (ARS), New York

 

 

 

本展を締めくくるのはピカソの100点のリトグラフ。ボラールは、またリトグラフ印刷にも関心を持ち、アーティスト達に自由に作画させモノグラフなどの出版を積極的に行った。その原画や版画も多く展示されている。近代美術史におけるアーティストと画商の関連を探りつつ、作品も楽しめ興味深いアプローチの展覧会。メトロポリタン美術館での展覧終了後、シカゴ、パリにも巡回予定。
 (Yoko Yamazaki)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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