THE WORLDS OF NAM JUN PAIK
5.MODULATION IN SYNC
同調、そして転調
パイクの思考の中心、彼の業績の中心には、映像の力がある。彼は今回の展覧会で、いかに映像が彼の芸術と思いに命を吹き込むかを、明確にしようとした。
今日、私たちはすべてのメディアの急速な変化の最先端にいる。 情報は私たちのところに新しく、より早くやってくる。 私たちの考え、エンターテイメント、商業、芸術は変化し続けている。 私たちは全世界的なメディア文化へと突き進んでいる。 芸術が芸術家の手と精神の中で何か新しいものへと変化を遂げたとき、具体的な表現と私たちのまわりの世界を理解するための方法としての芸術は、新しい発展を遂げる。 パイクの最新作は、レーザー光線、空間の変化、私たちの世界について想像したり考えたりする新しい方法を通して叙情的なものになっている。
虚実。 映像には視覚的情報の真実性やドキュメンタリー性に優れているという神話がある。 もちろん素晴らしく真実を捉えているものも多いが、現実に起こったことと比べた場合、そのイメージは限りなくフィクションである。 たとえ本物が映っていたとしてもそれは映像でしかない。 しかしその映像は映像として存在し、真実なのである。 映像のパラドックスはそのようなところに存在している。 そしてパイクは人間の未来を知るために、このパラドックスと長い間取り組んでいたのではないだろうか。 パイクの本の要約を通して、彼の素晴らしい才能に感嘆すると共に、私は自分自身と未来を照らし合わせている。
Noguchi