アート用語-ミニマリズム
「ミニマリスト」という言葉が、1961年に理論的に一貫したやり方で絵を描く事を最初に始めたアーティストたちを説明するために1960年代半ば頃に使われだした。ドナルド・ジャッド、カール・アンドレ、そしてダン・フレヴィンはいずれも1961年か1962年に先駆的な作品を制作している。
形容詞としての「ミニマリスト(minimalist)」は要素を切り詰めた、あるいは単純化された幾何学的な美術形式のほとんど何でも指して使うが美術史上の用語としての「ミニマリスト(Minimalist)」は大変限定された意味に使う。
ポップアートとミニマリズムの創始者は大半が抽象表現主義の技法を学んできたアーティストで、両者はともに50年代末の同じ状況の中から出現した。しかし、抽象表現主義様式の哲学過剰を感じ、不満をもっていた。アートをもっと基本的なものに引き戻すため、彼らは新しい主題を模索し始めた。「本物」を大衆文化のメディア・イメージ広告、テレビ番組、映画、雑誌、印刷された絵―との言葉で定義したアーティストたちが、初期のポップアートを発明した。「本当」の空間と「本物」の素材にもとづくアートを選んだアーティストたちが、ミニマリズムを発明した。1963年までには、この2つの運動が未来の鍵を握っている事は明瞭になった。
ポップアートとミニマリズムは共に抽象表現主義にとどめの一撃を見舞った。抽象画家のうち何人かはその後もそれなりの成功を収めはしたが、抽象表現主義自体は命脈が尽きたのである。
ミニマリズムの全盛期の間、大体1963年~1968年の間、芸術作品は「材料に忠実」であった。ミニマリズムの知覚が明瞭になったのは60年代半ばであった。作品は現実そのものであり、イリュージョンでもメタファーでもない。その製造方法は明かされず不可視であり、通常機械によって行なわれる。素材は産業用のもの、芸術用でないものをそのまま使用する。作品を作る過程は重視されない。(この意味でのちのプロセスアートとは一線を画する) 作品はしばしば、連続したユニットのセットとして並べられ、アーティストの手が触れた後は見られなかった(連続に配置する事が60年代末にはますます重要になっていった)。
ミニマリズムは、以後に出現した多くの技術潮流に哲学的根拠を与えた。ポップアートも60年代には同じように重要だったが、ポップアートは70年代には若い世代への影響が次第に薄れていったのに対し、ミニマリズムの影響は増大した。ポップアートは80年代に再登場するが、元のものとは非常に異なる形である。ミニマリズムの余波は、インスタレーション・アートとして、世界全体に広がった。