M.Y. Art Prospects

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Open/ Wed-Sat 11am-6pm

Cleverson

CLEVELANDIA 2002

(５／２９～６／２９、２００２)

M.Y. Art Prospects

Ancestry, 2002,

45 x 60 in.

Digital Flexi-Print, Edition of 5

　Cleverson(１９７２～）は、ブラジル生まれのアーティスト。彼のファーストネーム、Cleversonだけを用い、これをフルネームのように名乗っている。M.Y. ART Prospectsでの展覧会、CLEVELANDIA 2002は、CleversonのNYにおける初めての個展となった。

　画廊に並んだ作品は、すべて今年制作された新作ばかり。デジタル処理された画像を、フレクシプリントと呼ばれる、光沢のあるプラスチックペーパーに写し出す技法が用いられている。ピエロのような帽子をかぶった子供やカーボーイハットの男性などが黒いシルエットになって登場し、それは群像であったり、単独であったりと様々だ。認識できるのは男性か女性か、あるいは大人か子供ということだけ。手や体の取り込み方に表情があり、伝統的なファンタジー影絵を思い起こさせる。モデルは友人や家族。事前にある程度のイメージを想定した上での撮影であるが、偶然性も取り入れる。カメラのレンズによるデストーションがおもしろく、形体へのこだわりとともに遊びの余地を感じさせる作品になった。

画面右：Ancestry

　　　左：Mundo Cowboy, 2002

24 x 20 in.

Digital Flexi-Print, Edition of 5

　背景のブルーライトは、映画撮影などで、他の映像に人物をはめ込む際、あらかじめブルーをバックに人物だけを撮影するもの。その環境で影だけを強調したのが今回の展示。Cleversonの作品には、映画と写真の融合的な要素とともに、常にストーリーを暗示させるという特徴がある。写真のように時間が静止した作品の中にさえ、何かしら物語がひそむ。

　物語といえば、Cleverson監督・制作のフィルム、”Pias do Zodiaco(1995)" （１２分）。これは、日本のアニメ、”獣帯戦士（？）”をもとに作られた悪と戦う正義のストーリー。CLEVELANDIA 2002会期中、画廊にて2度放映された。演じるのは、ブラジルはクリティバという町の保護施設にいた十代の少年達で、Cleversonがその施設で少年達にアートを教えていたときに制作されたものだ。１９６０年代のB級カルト映画のブラジル人人気俳優、Ze do Caixao(Coffin Joe)も特別出演している。見るからに作り物と分かる血しぶき、決して高価ではない衣装、少年達のなれない台詞まわしや表情はこっけいなくらい不自然であるが、知らず知らず彼等の演技に引き込まれる。音楽や映像処理、フィルム編集の技術については評価が高く、リオデジャネイロにおける、12回リオ・シネ・フェスティバルにて、エド・ウッド賞を受賞した。

　”Pias do Zodiaco"に出演した少年達の中には、完成作品を見ないまま施設から出ることになったものもいるという。作品から派生する社会的な背景と、今回の展示で強調されたシルエットという組み合わせは、一瞬キャラ・ウオーカーの影絵作品を思い起こさせた。しかし、Cleversonの特徴は、より虚構的な映像空間にある。”セルフポートレート（Diptych)”では、わずかにずれた静止映像が層になり重なっているため、見る位置により画像がアニメーションの様に動くのであるが、まさに虚構を演じる魔術師のような自画像である。CLEVELANDIA 2002は、６月２９日に終了したが、６月２１日付けのNew York Timesにはグレース・グレック氏がレヴューを寄せた。今後のCleversonの展開が楽しみだ。

（Yoko Yamazaki)

Self Portrait (diptych), 2002

30 x 40 in. each

Digital Flexi-Print, Lenticular, Edition of 5

同じくSelf Portrait (diptych)

違う角度より撮影