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-CONCEPT-OLD記事

ブロンクス美術館

 

 

  Bronx Museum of the Arts
  1040 Grand Concourse, at 165th Street 
  tel: (718) 861-6000


美術館外観


ニューヨークの美術館のある試み:
ブロンクス美術館 "ワンプラネットアンダーザグルーブ"展より


One Planet under a Groove: Hip Hop and Contemporary Art
10月26日, 2001~5月26日 2002

ブロンクス美術館のあとは、
Walker Art Center, Minneapolis             (7月14日~10月13日、2002)
The Spelman College Museum of Fine Art, Atlanta (春期2003年)
に巡回予定。


 ブロンクス美術館は、ヤンキースタジアムに程近いブロンクス南西部に位置する。週末ともなるとラテン音楽と賑やかな声があちこちで交錯する地域だ。美術館は、20世紀と現代の美術が中心だが、近隣の住人達のエスニックな多様性を反映し、アフリカン、ラテン、そしてアジアンアメリカンの作品を主に扱う。 
 美術館が開館した1970年代初期は、ブロンクスではヒップホップカルチャー誕生の時期でもあった。美術館は、開館30周年を迎え、記念行事の一環としてヒップホップカルチャーと現代美術の影響関係を検証する展覧会を開催した。その展覧会、人気を博して先月終了した。タイトルの"One Planet under a Groove"は、70年代のFunkadelicの曲、"One Nation Under a Groove" から引用されたもの。

展覧会は、アメリカ、ヨーロッパ、日本で活躍する30人のアーティストによる、過去20年間からの60点に及ぶ絵画、彫刻、写真、ビデオ、インスタレーション等の作品から構成された。 
 DJ、ラップ、ブレイクダンスは、すべてヒップホップカルチャーから派生したもの。その音楽やファションは、ストリート文化から始まり、やがては人種、国を超えて、10億ドル産業となるような世界的な社会現象にまで発展した。2000年には、ブルックリン美術館で"ヒップホップ・ネイション"展が開催されている。その展示は、主に衣装やレコードジャケット、ビデオなどからなり、ヒップホップ現象を、アート作品というよりはむしろコマーシャル(商品)から検証するといったものだった。しかし今回のブロンクス美術館での展覧会がそれと大きく異なったのは、出品作品がすべてヒップホップカルチャーを反映あるいはその影響を受けたビジュアルアート(作品)にしぼられた点だった。


 


Cris Ofili, 

"Afrodizza(2nd Version),"

 1996.
acrylic, collage on canvas

96x72 3/8x6"
©The Bronx Museum of the Arts



 ギャラリーでは、すでに亡くなっているが、日本でもお馴染みのグラフィティ(落書き)アートを代表する、BasquiatとKeith Haringの作品がまず目をひいた。また、ブルックリン美術館の"センセーション"展で、聖母マリーの乳房に像の糞を使ったために、大きく話題になったアフリカンイギリス人作家Cris Ofiliの作品も並んだ。作品の中の小さな粒子は、コラージュ(切り張り)されたヒップホップカルチャーを代表する著名人達の写真。ニューヨークからは最近注目を浴びている若手のNikki S. Leeや、Sanford Biggers ( with David Ellis)の作品が出展された。Leeは、様々な共同社会の中でそれぞれ特有の扮装をしたセルフ・ポートレートをとり続ける韓国生まれのフォトグラファーで、今回は、B-Girl(break girl)に扮した自身の写真が展示された。Biggersは、マルチメディアを使い、ヒップホップカルチャーと宗教的な要素を融合させた作品を作る。 



Sanford Biggers (with David Ellis),"Mandale of the B-bodhisattva II," 

2000.
Rubber tiles, 16x16"

 feet(floor)
©The Bronx Museum of the Arts



 また、社会へのメッセージを歌ったラッパー達の様に、よりメッセージ性の強い作品も取り上げられた。Martin Wong(1946-1999)は、作品を前にポーズする彼の友人でもあるグラフィティアーティスト、Sharpを描いた。グラフィティは、アートスタジオの壁に掲げられたようでもあるが、よく見ると背景は公園などの公共の場に見られるフェンスであり、Sharpは町の片隅にたたずんでいるだけだ。



Martin Wong,"Sharp Paints A Picture," 

1997-98.
Acrylic on Canvas, 30x48"
©The Bronx Museum of the Arts


Max King Capの作品は、タイトルが"Counted, Track, Observed" (1998)。ことばのそれぞれは、典型的なアフリカン・アメリカン男性へのイメージを皮肉ったもので、それぞれタイトルの言葉が一つづつ、狩猟ユニフォームの胸に刺繍されている。



Max King Cap,"Counted, Track, Observed," 

1998,
Carhartt canvas jackets, 

48x36x4" each
©The Bronx Museum of the Arts



 展覧会タイトルのOne Planet(一つの惑星)が示すように、作品の全てはヒップホップカルチャーを肯定的に受け止めたものだ。しかし、自然派生的な、社会に捕われない若者達の文化が70年代ヒップホップの原点であるとしたら、若い世代のビジュアルアーティスト達のヒップホップカルチャーの引用は、アートワールドという目を通した意図されたものでもあり、矛盾するとも考えられる。けれども、逆にヒップホップから出発した観客層には、様々なアートとの接点は新鮮だったのではないか。実際今回のこの企画は、新しい入館者の開拓に多いに役立った。広報担当のRonald Kavanaugh氏によると、日頃の3~4倍の入館数を記録したという。しかもその内訳で目立ったのは、ヨーロッパや、特にアジアからの旅行者の来館者だったそうだ。当のブロンクスの住人達からの評判もよかったようで、美術館としては、大きな成功をおさめた。
 都市部近郊の美術館にとって、新しい入館者層の開拓は、大きな課題だ。ひとくちにニューヨークといっても、人々の関心は、マンハッタンでの催しに集中するのが現状。マンハッタンからいったん川を超えたブロンクスやブルックリン、そしてクイーンズの美術館では、その動員数は、マンハッタンの美術館に及ぶものではなく、それぞれが、新しい企画へ向けて動きだしている。ヒップホップカルチャーのような展覧会は、地域好みによりすぎる企画ではないかという議論もある。しかし観客参加の奨励は、マンハッタン近郊美術館の任務の一つでもあり、その実現ヘの検討は、美術館独自の企画探りに確かにつながっているようだ。


(Yoko Yamazaki)



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