ロバート・メイプルソープとクラシカル・トラディション展
Robert
Mapplethorpe and the Classical Tradition: Photographs and Mannerist Prints
7/1−8/24、2005
グッゲンハイム美術館
メイプルソープ(1946−89)の写真と16世紀後半のマニエリスムの作品を比較展示する本展は、グッゲンハイムとエミルタージュ美術館の共同企画。
マニエリスムとは、盛期ルネサンス以後から、バロックに移行する時代に美術の表現としてヨーロッパに普及した様式。調和的なルネサンスの表現に対し、不調和を目指した傾向があり、誇張した技巧が特徴。本展にあたり、フランドル地方のエングレービング(銅版画の一種)と小口木版による作品がエミルタージュより貸し出された。
Hendrick Goltzius after Cornelis Cornelisz. van Haarlem
Phaeton from The Four
Disgracers,
late 16th century, first state dated 1588.
Engraving, diameter: 12 15/16 inches.
State Hermitage Museum, St. Petersburg. OG-30417.
© 2005 State Hermitage Museum.
Robert Mapplethorpe
Thomas,
1987.
Gelatin-silver print,
A.P.1/2, 18 7/8 x 18 7/8 inches .
Solomon R. Guggenheim Museum, New York, Gift, Robert Mapplethorpe Foundation.
93.4304.
© Robert Mapplethorpe Foundation.
メイプルソープの写真は、80年代、性や人種と言うテーマに触れ、スキャンダラスなものと言う評価をうける傾向にあった。しかし、本展は、彼のクラシック美術への憧憬を示唆するもの。生前彼は、「もし100年、あるいは200年前に生まれていたら、自分は彫刻家であったかもしれない。しかし、写真は彫刻を理解し、作りだす完璧な方法だ。」と語っている。また、古典彫刻をモチーフに制作も行なっている。マニエリスム版画に見られる誇張された肉体の表現は、メイプルソープの写真と呼応する。ともに肉体を劇的に見せたいと言う願望があったのは確かなようだ。
数百年の開きがある比較に対して疑問を感じる人もいるようだが、美術館展示の実験的切り口として評価できる。
Robert Mapplethorpe
Thomas and Dovanna,
1986.
Gelatin-silver print,
A.P. 1/2, 23 1/8 x 19 1/4 inches.
Solomon R. Guggenheim Museum, New York, Gift, Robert Mapplethorpe Foundation.
93.4303.
© Robert Mapplethorpe Foundation.
Jan
Harmensz. Muller after waxworks by Adriaen de Vries
A Roman Abducting a Sabine
Woman, from
The Rape of the Sabine Women,
16th century. Engraving, 17 11/16 inches x 11 inches.
State Hermitage Museum, St. Petersburg. OG-153449.
© 2005 State Hermitage Museum.
また、本展と同時開催されたのが、バスク地方(スペインとフランスの国境)出身のオテイサ(Oteiza 1908-2003)の彫刻展、“神話とモダニズムMyth and Modernism”展。スペインでは非常に有名なアーティストだというが、アメリカではこれが初の回顧展となる。バスク独特の文化とともに20世紀前半のキュビズム、シュプレマティズム(至高主義)、コンストラクティビズム(構成主義)などの影響をうけたというオテイアの作品は、フランク・ロイド・ライト(1867−1959)の建築と不思議な調和をみせる。彼らの時代が重なっているからだろうか。メイプルソープとマニエリスムの時代を超えた比較展示と対照的な展示のように感じられ、興味深かった。(Yoko Yamazaki)
Jorge Oteiza
You are Peter, 1956–57
Marble
7 7/8 x 5 7/8 x 5 ½ inches
Private Collection, Madrid
Photo: © FMGB Guggenheim Bilbao Museoa: Erika Barahona Ede
© 2005 Jorge Oteiza, VEGAP, Bilbao