ミケランジェロ最初の絵画
6/16-9/7, 2009
メトロポリタン美術館
ミケランジェロ(1475-1564)は、大理石像「ピエタ」や「ダビデ」などで知られるイタリアルネッサンスの代表的な彫刻家。絵画への造詣も深く、ルネッサンスの伝記作家バザーリは、ミケランジェロの絵画の師匠ギルランダイオがその才能に嫉妬したという逸話を載せている。
ミケランジェロの絵画のセンスについては、彼が描いたバチカンのシスティーナ礼拝堂のフレスコ画にまつわる現代版エピソードもある。1980から1994年にかけて礼拝堂壁画の修復が大々的に行われた際、修復後に現れたのはそれまでの暗く重々しい画面とは全く異なった強烈な色調と鮮やかな配色だった。そのため修復作業がフレスコの表面を損傷したのではないか、いやそれが本来の色だという大議論が巻き起こった。今では修復後の色調がミケランジェロの画家としての特異な色彩感覚を裏付けるものというのが一般的。
Michelangelo Buonarroti (Florence 1475-Rome 1564)
The Torment of Saint Anthony, ca. 1487-88
Oil and tempera on panel, 18 1/2 x 13 3/4 inches
Kimbell Art Museum, Fort Worth
Photograph: The Metropolitan Museum of Art, New York
さて、このたびメトロポリタン美術館2階イタリアルネッサンスのギャラリーで、ミケランジェロの初期の絵画作品が発表され話題になっている。その作品は、ミケランジェロがわずか12-3歳のころに銅版画を模写したといわれるものでテキサス・フォートワースのキンベル美術館が最近購入した「聖アンソニーの苦悩」。キンベル美術館の永久所蔵となる前にメトロポリタンが修復と調査を行い、その修復のレポートを合わせて紹介したもの。
今回の作品に関して、専門家達がミケランジェロの手によるものという確証を得たのは、科学的な見地はもちろん、模写とはいえ独自の構成処理と豊かな色使いから。ミケランジェロのイーゼル絵画は世界でもまだ4点しか知られていないといい、その作品の一点がアメリカ所有となったことで話題になっている。小さな作品と展示だがニューヨークで見ることができるのは貴重。ミケランジェロのもと師匠、ギルランダイオの作品も近くに常設されている。(yoko
yamazaki)