THE WORLDS OF NAM JUN PAIK 1. INTRODUCTION 序曲 1-1 “The Worlds of Nam June Paik” はパイクの人生と芸術を評価し省みたものである。 パイクの芸術家としての生涯は真に国際的であって、彼の ビデオ・アートや テレビ・アートの衝撃は深くて計り知れない。 パイクの独特な芸術活動を示す創造的な過程の前景には、アジア、ヨーロッパ、アメリカと変化にとんだ活動を分類し、調査する必要がある。 それはその変化に応じて、彼の中で変わっていった関心や、変貌を遂げた芸術活動の手法である。 この本では、パイクが初期に構成やパフォーマンスの基礎とした過程の、実り豊かで複雑な経歴を読むことができる。 彼のキャリアでは、私たちの日常生活に電子映像とメディア・テクノロジーが浸透していった時代において、彼のメディア・アートのアイディアが強烈に形作られている。 立ち代って、パイクの仕事は、20世紀後半のメディアカルチャーにおける、知的な深さと止むことのない刺激で満たされている。 彼の注目すべき過去は、テレビ放送や、ビデオが芸術家の素材へと再定義されたことを証言し、この再定義に影響を与えた。 パイクの芸術人生は、1950年代、60年代、70年代の政治や反芸術活動とは別のところで生まれた。
社会と文化が変化したこの時期、彼はパフォーマンスの持っている表現能力や概念的な力と、映像が結合した新しいテクノロジーの可能性を組み合わせることに熱中した。
パイクは、前衛における
シネマティックなイメージと、フィルムとビデオを何にでも応用可能でダイナミックな多様的芸術形態とみなす自主制作フィルムとがもつ大いなる意志を悟っていたと思われる。
ビデオテープや彫刻的な インスタレーションという様式と同様にテレビを使うことで、彼は電子映像に新しい意味を吹き込んだ。
パイクのビデオやテレビに対する研究と芸術家の媒体となる電子映像への変換という彼の重要な役割は、メディア・アートの歴史の一部を成すものである。
20世紀を振り返ったとき、映像の概念は、記録と
仮想的テクノロジーを通した抽象的なイメージを表現するのに使用されたものとして、異なるメディアを支えた力強い論説で構成されている。
その動的かつ世俗的なイメージの概念は、芸術家が新しい戦略と創造的な形式を明確にした重要な様式である。このことを理解するためには、私たちは歴史的なモデルと理論的な解釈を形づくる必要がある。それは私たちの視覚文化の中心に映像を位置付けることである。 パイクの最近の新しいメディアの創造的展開は、レーザーの技術を通したものである。彼のインスタレーション最新作は 「ポスト・ビデオ・プロジェクト」と呼ばれている。それは、垂れ幕や滝、煙の彫刻に映し出されたレーザーの使用を通した現実的に動く キネティックなイメージを結び続けている。21世紀の始まりに、パイクの芸術は、映画とビデオは新しい イメージ・テクノロジーへと進んでいる デジタル・メディアと表現形式を融合している。そして私たちの知っているビデオとテレビの終わりは、私たちの視覚文化の変動を知らしめている。 Tokuo Noguchi
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